
地方都市で人気の間取りとは?賃貸経営を成功させるための入居者ニーズ完全ガイド
将来の備えとして不動産投資に関心を持つサラリーマンが増える中、「地方でアパート経営を始めてみたいが、どんな間取りが人気なのかわからない」という悩みをよく耳にします。都市部とは異なるニーズが存在する地方市場で、空室リスクを抑える物件を見極めるには、エリア特性と入居者の暮らし方を深く理解することが不可欠です。
私たちは10年以上、地方都市でアパート・マンションの管理に携わってきました。今回はその経験をもとに、地方で求められる間取りや設備の傾向についてお伝えします。
なぜ「駅近」だけでは戦えない?地方物件ならではの選ばれ方
都市部では「駅から徒歩○分」という立地条件が何よりも優先されがちですが、地方都市ではそもそも電車が日常の足になっていない地域が少なくありません。バス移動や自家用車での通勤が一般的で、駅までの距離は選ばれる条件の一つではあるものの、それほど決定打にはなりません。
その代わりに重視されるのが、バス停の近さや主要道路までのアクセス、さらには職場・学校・商業施設への距離感です。駅前でなくても、生活導線が便利であれば選ばれる余地は十分にあります。
車社会の地方では「駐車場の有無」が決定打に
都市部とは異なり、地方では一家に2台以上の車を保有している家庭も珍しくありません。したがって、賃貸物件を探す際に駐車場の有無は非常に重要な条件となります。単身用でも最低1台、ファミリータイプの物件なら2台分の駐車スペースが求められる傾向があります。
特に敷地内に駐車できるかどうかが評価に直結し、月極駐車場を別途借りる必要がある物件は、家賃とのバランスで敬遠されやすくなります。家賃に駐車場代が込みになっている物件は、地域によっては安定した人気を得やすいでしょう。
LDKが人気、DKは「古い印象」で敬遠されがち
地方でもっとも選ばれやすいのは、やはりLDKタイプの間取りです。キッチンと居室が明確に分かれた古いDKタイプの物件は、どうしても昭和のイメージがつきまとい、若年層からは敬遠されがちです。新しさや清潔感を重視する入居者にとって、広々としたLDKは魅力的に映ります。
築年数が経っていても、間取りをリノベーションし、DKからLDKに変更した物件は決まりやすくなる傾向があります。地方のアパート経営では、「いかに生活動線を快適に見せるか」がカギになります。
地方賃貸市場における人気設備と暮らしやすさの基準
物件の築年数だけではなく、設備や仕様の違いが選ばれる・選ばれないを大きく分けるポイントになります。地方都市においては、「バストイレ別」はいまやほぼ標準的なニーズです。
バストイレ別はもはや必須、独立洗面台も強い要望
都市部では「家賃が安ければユニットバスでも可」という層が一定数いますが、地方では事情が異なります。比較的広めの間取りが多く、家賃も手頃なため、単身者であっても「バストイレ別」が強く求められます。さらに「独立洗面台が欲しい」という声も多く、物件選びの優先順位として上位に上がるケースが増えています。
このため、古い物件でも水回りの設備をアップグレードすることで、競争力を高めることができます。とくにファミリー層向けでは、三点分離(バス・トイレ・洗面)がほぼ必須条件になりつつあります。
エレベーターなしの2〜4階建が一般的。その分、階段負担を考慮
地方のアパートは、比較的広い敷地に低層階で建てられていることが多く、2〜4階建てが主流です。エレベーターがない物件も珍しくなく、それ自体が大きな問題にはなりませんが、階段の上り下りに対する負担を嫌う入居者も一定数います。
特に小さなお子さんのいる家庭や高齢者世帯にとって、階段が多いことはマイナスポイントになる可能性があります。2階以上の物件では「眺望」や「日当たり」など別の価値をしっかり訴求する工夫が必要です。
どんな間取りが「決まりやすい」?地元管理の現場から見える傾向
私たちが地方で日々物件の管理に携わってきた中で感じるのは、「新しくて綺麗な物件」と「古くて家賃が安い物件」という両極にニーズが分かれやすいという点です。しかし、その中間にある「そこそこ新しく、そこそこ家賃が手頃」な物件こそ、実は一番決まりやすいと感じています。
「ちょうどいい設定」ができる物件は空室期間が短い
新築並みに綺麗でなくても、ある程度の設備が整い、見た目にも古さを感じさせない。しかも家賃が過剰に高くない。そういった「ちょうどよさ」を備えた物件は、早期に入居が決まる傾向にあります。
この“ちょうどよさ”は、地域の入居者が求めている「価格帯」と「間取り・設備」のクロスポイントを見極めることで成立します。これは単に数字で判断できるものではなく、地域密着で入居者の声を聞いている管理会社との情報共有が不可欠です。
人気が出にくい間取りは何を強みにするかを考える
エリアによっては、希望条件から外れている物件でも、工夫次第で入居を獲得できます。たとえば、DKタイプでも家賃を抑えつつ設備をリフレッシュしたり、共用部を清潔に保つなど、細部の丁寧な管理が効いてくるケースもあります。
競合物件に比べて弱い部分があるなら、それを補う何かを打ち出す必要があります。「広さ」「ペット可」「インターネット無料」など、ニーズに合わせて差別化することで、空室期間を最小限に抑えることが可能になります。
まとめ|地方の入居者ニーズを捉えた間取り・設備選びが成功の鍵
地方でのアパート経営においては、都市部とは異なる入居者の暮らし方を丁寧に読み解く姿勢が重要です。駅近だけで勝負できないエリアだからこそ、間取り、駐車場、設備、価格帯の絶妙なバランスが求められます。
そして、どんな物件にも必ず「地域との相性」があります。市場に溶け込む物件を作るには、地域を知り尽くした管理会社との連携が何よりの武器になるでしょう。